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来し方行く末

「あららっ? あれっ?!」
 光に導かれて辿り着いた場所、桜並木がどこまでも続く美しい世界で声を上げる。
 幾重にも桜が舞う視界の先、一番手前の木へ沿うように立っていたのは。
「義勇さん!」
「炭治郎」
 駆け寄った相手が応えて名を呼ぶ。満たされる温かさで胸が躍り、どうしてここへ?と続けて聞いた。僅かな間、思案かと予想した反応はしかし、解せぬという匂いでもって返された。
「お前が連れてきたんだろう」
「そうでした!」
 現世の冨岡が抱えたまま生まれた想いに引っ張られ、眠っていたのは炭治郎だけではない。溶け合うほどに絡んだ魂が癒着していたのを、全てこちらへ誘ってきたのだ。
 であれば、同時に到着しても良さそうなものだと考えてふと思い当たる。
「義勇さん、いつも俺の先にいてくれるんですね」
 見守る位置で、失わぬようにと前に立つ。どれだけ救われてきたことか。感極まる炭治郎をよそに、難しい顔で口を開こうとしたので察して止めた。
「謝るの、なしです」
 無意識で伸ばした唇に触れる直前の指が捕らえられ、そのまま繋ぐ形となる。引かれて歩き出し、花びらを浴びながら終点を目指した。
「……お前はもっと早くこちらに来られただろうに」
「義勇さんが一緒じゃないと嫌です」
 尚も懺悔の混ざったことを言うので、気持ちを宣言すれば大人しく黙った。置いていくなどもってのほか、終わりよければ全てよし。繋ぐ手を握れば、同じだけ力が込められる。
「でも、向こうの俺と会う前で良かった」
 ひと仕事終えた気分で呟けば、何故かと視線だけで問う気配。屈託なく笑って隣を見上げる。
「思い出は、二人のものですから」

2019/11/11
無限城で二人が無惨と邂逅した次の週が巻頭カラーだったので、最悪の事態を考えて勢いで書いたもの。

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